自分で心エコーを撮らない非専門医や,看護師をはじめとした循環器疾患の患者と接する医療従事者,そして循環器科を勉強中の研修医が,日頃わかりにくくてむずかしいと感じている心エコーの検査所見.そこに記載されている数値が,何を計測し何を意味しているのかをしっかり理解し,心臓の状態を解釈し,病態の評価ができるようになるための数々のヒントを,やさしい語り口でわかりやすく解説した必読の入門書.
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目次
序 文
略語一覧
Part 1 心エコー これだけは知っておこう
01本書の目的について
02心エコーとはどのようなものなのか
03どうして心エコーで圧力がわかるのか
04心エコーの限界
Part 2 心エコーの指標 これだけは理解しよう
A 2Dエコーの指標
01心エコーの検査所見について
02左室径(拡張末期・収縮末期)
03左室駆出率
04新しい収縮能指標―左室長軸ストレイン
05左室壁厚と左室肥大
06左房の大きさ
07右心系の評価
08左室壁運動の評価①
09左室壁運動の評価②
まとめ
B ドプラエコーの指標:左室機能
01ドプラエコーで何をみるか
02左室心拍出量の評価
03左室拡張能とは何か①
04左室拡張能とは何か②
05心エコーで左室拡張能を評価する
06左室流入血流のE/A比
07左室流入血流のその他の指標
08組織ドプラ指標:e,E/e
09心エコーによる左室拡張障害の診断
まとめ
C ドプラエコーの指標:弁膜疾患など
01大動脈弁狭窄症の評価
02大動脈弁閉鎖不全症の評価
03僧帽弁狭窄症の評価
04僧帽弁閉鎖不全症の評価
05三尖弁,肺動脈弁の評価
06先天性心疾患の見方
まとめ
Part 3 ケーススタディー 心エコーでここまで読もう
ケーススタディー01下腿浮腫を訴える陳旧性心筋梗塞症例
ケーススタディー02動悸,呼吸困難感で救急搬送された症例
ケーススタディー03呼吸困難感で緊急入院した症例
ケーススタディー04動悸,労作時の息切れを主訴とする症例
ケーススタディー05動悸,不整脈にて受診した症例
ケーススタディー06ふらつきを主訴とする高齢者の症例
索 引
著者略歴
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序文
序 文
世の中には心エコーについての本が,初心者のための入門書からベテラン向きの高度な専門書まで満ち溢れています.この本はそれらと違ったユニークな本を目指しています.
心電図の本はどれも心電図の読み方を説明するもので,心電図をどう記録するかについてはごくわずかしか述べていません.読者のほとんどが自分で心電図を記録するのでなく,心電図を読む方ですので当然です.それに対し心エコーの本の多くは心エコーを撮る方を念頭に,心エコー画像をどのように判断するか,ある病気の心エコーではどのような点に注目するかなどについて書かれています.しかし,心エコーを必要とされる方の多くは実際にプローブを持つ方ではなく,検査結果だけをみられる方だと思います.
心エコーの検査所見には多くの数値や所見が記載されていますが,皆さんはこれらの数値をどのように読んで,活用されていますでしょうか.左室駆出率などはみられると思いますが,それ以外はサマリーを読んで終わりという方もいらっしゃるかと思います.でも,それではもったいないと思いませんか?
心エコーの検査所見にある数値や所見は宝の山です.しっかり読み込めば,心不全の病態,虚血性心疾患における病変部位,治療方針や手術適応,さらには今までの病気の経過までわかります.そのためには,検査所見に書かれている数値がそれぞれ何を意味しているかを理解し,それらを組み合わせて解釈することが求められます.本書はそのためのヒントを,プローブは持たないけれど検査所見をきちんと読みたい皆さんにお示しできればと思います.心エコーの画像も多く含んでいますが,あくまで心エコーではこんなものをみているのだと知ってもらうためのものですので,こんなものと眺めてさえもらえれば結構です.
看護師さんをはじめとするすべての医療従事者の方,循環器医以外の医師の方はもちろんのこと,臨床研修で循環器科の勉強をされる若い先生方にも読んでいただければと思っています.これからの医療を担う医学生,看護学生などの方にも参考になるかもしれません.あるいは循環器医でも心エコーの業務には携わっていない方にもお役に立てればと思います.本書が,心エコーの検査所見をよりよく読み,患者さんの病態をより理解できるための手助けになればと願っています.
2024年12月
岩倉克臣