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書籍詳細

メンタルヘルスにかかわる医療職種・支援者必携
働く人のメンタル不調サポートブック診断と治療社 | 書籍詳細:働く人のメンタル不調サポートブック

PHメンタルクリニック 所長

姫井 昭男(ひめい あきお) 著

初版 A5判 並製 264頁 2024年12月31日発行

ISBN9784787826992

定価:4,400円(本体価格4,000円+税)ただいまメンテナンス中です。
  

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精神科を専門としない医師/保健師/職場のメンタルヘルスに携わる支援者の方々に向け,できるだけわかりやすく,具体的なケース(例示)を用いて,メンタル障害が生じるまでのプロセス(病理)や,働く世代に多くみられる・療養が必要となるメンタル障害の特徴(病態),療養の在り方,休職者への職場の対応の留意点,復職支援のコツなどを解説しました.
「これってメンタル不調?」「もしかしてメンタル障害?」そう思ったときに是非ひらいていただきたい1冊です.

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目次

発刊によせて

第1章 メンタル不調
1.ストレス・メンタル不調・メンタル障害
 ストレス
 メンタル不調
 メンタル障害発現リスク
 ストレス反応と神経ネットワーク
2.ストレスがメンタル障害を引き起こすメカニズム
 メンタル障害と神経伝達物質
 メンタル不調=神経伝達物質バランス調整期
3.身体的な不健康とメンタル障害
 「慢性的な不健康」
 慢性的な身体的不健康とメンタル不調の予兆
 「慢性的な身体的不健康な人たち」が周りに与える影響
 健康管理における就業制限
 潜在的なコントロール障害
 悪化する生活習慣病はコントロール障害

第2章 代表的なメンタル障害
1.「うつ」と「躁」
 うつ病とうつ状態
 うつ病とうつ状態の違い
 「うつ状態」を呈する様々なメンタル障害
 対症療法としての薬物治療
 気分の波と気分の障害
 躁状態にみられる症状
 躁状態の治療
[関連知識]
 内因性うつ病
 再発予防のための疾病教育
 双極症とパーソナリティ障害
2.不安症・パニック症・強迫症
 不安症
 パニック症
 強迫症
[関連知識]
 処方薬依存
3.ストレス関連障害
 意識されないストレス
 ストレスのパズル
 ストレス関連障害
 身体症状症(身体表現性障害)
[関連知識]
 ストレスを作り出す習性
 PTSD発現の脆弱性
 回復しないPTSDケース
 ストレス障害としての慢性疲労症候群
 急性ストレス障害,適応障害,PTSD
4.病的体験を有するメンタル障害
 病的体験
 統合失調症
 薬物依存・乱用における幻覚や妄想
[関連知識]
 機能性と器質性の幻覚・妄想の違い
 頭部外傷後遺症における幻覚や妄想
 妄想性障害・パラフレニー
 せん妄
5.パーソナリティ障害
 パーソナリティの定義
 パーソナリティ障害のサブタイプ
 職場で遭遇するパーソナリティ障害の特徴
 パーソナリティ障害の治療
 職場におけるパーソナリティ障害の対応
 パーソナリティ障害のまとめ
[関連知識]
 最近職場で目立つパーソナリティ障害
 パーソナリティ障害の様々な社会的逸脱行動と対応の考え方
 自傷行為
 パーソナリティ障害の増加
 解離性障害とパーソナリティ障害
6.依存症(コントロール障害)
 「依存症」
 適正行動と依存症
 依存症は「否認の病」
 依存症者との関わり方
 共依存
 依存症の治療
[関連知識]
 回復過程での援助者への働きかけ
 自助グループ
 回復過程でのピットホール
 依存症と遺伝
7.成人発達障害(大人の発達障害)
 発達障害
 発達障害の分類
 発達障害と薬物療法
[関連知識]
 発達性協調運動障害(developmental coordination disorder:DCD)
 HSP

第3章 代表的なメンタル障害の実例とその対応
1.うつ病とうつ状態,双極症(双極性障害)
 「うつ病」のケース
 「うつ状態」のケース
 「躁病」のケース
 「双極性気分障害:躁状態」のケース
2.ストレス関連障害(適応障害,身体症状症)
 適応障害ケース
3.病的体験を有するメンタル障害
 統合失調症の初発ケース
 妄想性障害のケース
4.パーソナリティ障害
 ボーダーラインパーソナリティ障害のケース
 自己愛性パーソナリティ障害のケース
5.様々な依存症(コントロール障害)
 アルコール依存症ケース
 ギャンブル依存症(病的賭博)ケース
[関連知識]
 習慣が原因による病気の啓発をいつ行うべきか?

第4章 職場のメンタルヘルス
1.安全配慮としての予見
a)ラインケア
 余裕がないラインケアは失敗に終わる
 1人で抱え込まない
 見守りと放任の違いを理解する
b)マネジメント(管理と監督)
c)予見義務
[関連知識]
 「信望」を得るための言動
2.「職場不適合・不適応」と自称「うつ」
 「適合」と「適応」
 「職場不適合」
 「職場不適応」
 「職場不適合」と「職場不適応」の症状
 「職場不適合」と「職場不適応」への対応
 自称「うつ」
 「うつ病」と自称「うつ」の対比
 自称「うつ」にみられる2つのタイプ
 自称「うつ」の治療
[関連知識]
 「過去の英雄」
 社会背景と「過剰適応」
 自称「うつ」の社会復帰が容易でない理由
3.健康管理としての時間管理
 過重労働と健康被害
 残業時間のチェック体制
 長時間労働における健康管理のポイント
 裁量労働制勤務,フレックスタイム制勤務・在宅勤務労働者への啓発
 「息抜き」と「手抜き」を混同させない
 勤怠不良とメンタル障害
[関連知識]
 仕事が立て込むメカニズム
4.メンタル障害の休職と復職
 メンタル障害の休職事情
 制度としての『病気休職(療養休職)』
 法的にみた『病気休職』の解釈
 就業規則の変更と「病気休職」
 メンタル障害での長期休職後の実態
 無用な長期休職を防ぐ啓発
 適正な休職と休職期間
 休職開始前に伝えておくこと:「休職と復職の手引き」
 療養状況を報告させる:「療養状況報告書」
 復職準備のための生活管理:「生活記録報告書」
a)リハビリ出社,リワークプログラムの落とし穴
 復職決定に関する合議体設置のすすめ
 「復職に関する担当医師の意見書」の導入
 段階的負荷の復職支援プログラムのモデル
 復職支援プログラム中の留意するポイント
 安全配慮観点からの復職支援プログラム中止
 業務負荷軽減の共通認識
[関連知識]
 産業医と精神科医,双方の誤解
 精神科医の認識の問題
 診断書・意見書における問題
5.高齢者雇用時代のメンタルヘルス管理
 雇用によるメンタルヘルス維持・向上
 高齢労働者本人からの就労意欲の確認
 高齢者雇用における職場での課題
 高齢者に潜在しているメンタル障害
[関連知識]
 高齢労働者の健康診断項目を考える
 高齢者雇用における職場のメリット

第5章 メンタルに問題を抱える人に対する職場関係者の関わり方
1.間違ってはいけない職場の問題者への対応
 最初の注意でトラブル回避
 『若者』との関わり方
2.メンタルヘルスのセルフケア・マネジメントの推進
 セルフチェック・セルフケア実施の啓発
 セルフチェック
『セルフマネジメント』-自分を見失わないためのマネジメント-
 「行動指針」のセルフマネジメント
 「決断」のセルフマネジメント
 「ロジック」のセルフマネジメント
 「能力向上」のセルフマネジメント
 「アイデンティティ確立」のセルフマネジメント
 「ワークライフバランス(work?life balance)」のセルフマネジメント
 ストレスを増殖させるネガティブ思考
 ストレスと上手く付き合う
[関連知識]
 放置できないストレス

付録 円滑な職場復帰のヒント
 職場復帰(復職)を円滑にするために
 療養開始前の留意点
 療養中の留意点
 復職時の留意点
 再休職予防

おわりに
索 引

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序文

 2020年の厚生労働省の実施した労働安全衛生に関する実態調査では,半数以上の労働者が働くことに関してストレスや不安を感じていると報告されています.また,社会の混乱が続く世界情勢を鑑みると,これからもストレスは高まることが容易に予想され,誰もがいつストレスに押し潰されてメンタル不調となっても不思議ではないというのが現状です.
 職場でメンタルヘルス問題による長期の休業者が1人出ると,その影響は少なくとも上司と同僚の2人への皺寄せが生じ,複数人が高負荷,つまり高ストレス状態となります.これは生産性維持に問題が生じるだけでなく,次の休業者が出現するリスクが高まり,休業者の負の連鎖を生むのです.
 メンタルヘルスにおいて,メンタル不調とメンタル障害は厳密には違います.メンタル不調の状態では職場で当事者・職場関係者への利益に繋がるcareを密に行うことでメンタル障害への発展を防ぐ=予防が可能となります.ところが,メンタル障害にまで至ってしまった場合には,careではなくcureが必要となり,職場でできることは双方の不利益を最小限に抑える復職支援となります.これらはいずれも言葉のように簡単ではなく,上手く取り組もうとして試行錯誤すればするほど,個別案件対応となって一貫性に欠け,組織では公平性を担保できなくなることや関係者の労力対効果から一向にメンタルヘルス対策が改善されないという実情が多くみられます(筆者が精神科臨床医と産業医の両方の立場から,職場のメンタルヘルス対策の構築に携わっている経験からも実感されることです).
 社会を取り巻く環境に大きな影響を受けている職場で,メンタル障害を事由に療養する当事者や職場関係者のそれぞれの立場の意見の聴取面接,療養を発端とする労務問題の解決支援を行ってきましたが,多くの職場では,そのようなアクションを手探りでやっているリスクを懸念する相談やどのように行えばよいのか相談を受けることが,この5年で急激に増えました.
 このような経験から,精神医学と産業医学を融合したような職場におけるメンタルヘルスに関連したマニュアルになるような書物の必要性を感じていました.そんな折り,この趣意を理解いただき,執筆する機会が得られ,本書が刊行されることになったのです.
 本書は,精神科臨床医と産業医の経験に基づき,職場の労務管理を行う人事担当者や精神科を専門としない産業医や保健師の方々に向けて,できるだけわかりやすくするためにケース(例示)を用いて,メンタル障害が生じるまでのプロセス(病理),働く世代に多くみられ,また療養が必要となるメンタル障害の特徴(病態),メンタル障害による療養の在り方,休職者への職場の対応の留意点,復職支援のコツなどを解説しています.
 本書が,職場におけるメンタルヘルス維持向上としての疾病予防(早期発見)と円滑な復職の一助となれば幸いです.

2024年11月
姫井昭男