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書籍詳細

多発性硬化症・視神経脊髄炎診療のすべて診断と治療社 | 書籍詳細:多発性硬化症・視神経脊髄炎診療のすべて

国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部 特任部長

山村 隆(やまむら たかし) 監修

国立精神・神経医療研究センター病院脳神経内科 副部長

岡本 智子(おかもと ともこ) 編集

国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター 開発戦略室長

佐藤 和貴郎(さとう わきろう) 編集

初版 B5判 並製 312頁 2025年01月24日発行

ISBN9784787826619

定価:7,480円(本体価格6,800円+税)
  

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NCNP病院多発性硬化症センターの長年のノウハウを一挙公開.好評を博した前書『多発性硬化症(MS)診療のすべて』刊行以降,MS・NMO の病態研究や薬剤開発は加速度的な進歩を遂げた.本書では「病態を踏まえた医療」「あきらめない医療」の実践を骨格とした精神を引継ぎつつ,最新知見から実践的治療戦略までを網羅した改訂を行った.日常診療から今後の展望まで,まさにMS・NMO診療の「すべて」を学べる1冊.

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目次

序文   山村 隆
執筆者一覧
「病態・疾患関連」略語一覧
「検査・尺度・指標関連」略語一覧
「薬剤・治療関連」略語一覧

第1章 多発性硬化症(MS)の診断
 1 MSの診断―総論   山村 隆
 2 MSの病型と診断の道筋   宮本勝一
 3 画像診断
  a MSの画像診断   木村有喜男/佐藤典子
  b NMOSDの画像診断   池之内 穣/佐藤典子
  c MOGADの画像診断   加賀谷理紗/佐藤典子
 4 機能評価   勝元敦子

第2章 多発性硬化症(MS)の鑑別診断と関連疾患
 1 鑑別診断のポイント   岡本智子
 2 抗体陰性NMOSD   荒木 学
 3 抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)   勝元敦子
 4 NINJA   竹脇大貴

第3章 多発性硬化症(MS)の臨床
 1 外来診療の考えかた   山村 隆
 2 外来治療,入院治療の判断,退院のタイミング
 3 NEDA以外に考慮すべき因子   山村 隆
 4 ステロイドパルス療法   林 幼偉
 5 経口ステロイド   山村 隆/林 幼偉
 6 疾患修飾薬(DMD)
  a インターフェロン(IFN)   荒木 学
  b グラチラマー酢酸塩(GA)   宮本勝一
  c フィンゴリモド(FTY)   横山和正
  d ナタリズマブ(NTZ)   濱谷美緒/近藤誉之
  e フマル酸ジメチル(DMF)   横山和正
  f オファツムマブ(OMB)   岡本智子
  g シポニモドフマル酸   宮﨑雄生
 7 免疫抑制薬   林 幼偉
 8 実臨床における薬剤導入と切り替え   山村 隆
 9 実臨床におけるcombination therapy   林 幼偉
 10 精神症状への対応   野田隆政/中澤佳奈子/清水 悠/安藤久美子
 11 対症療法
  a 疼痛,痙縮など   岡本智子
  b 疲労,倦怠感,睡眠障害など
 12 妊娠・出産   清水優子
 13 小児   佐久間 啓
 14 MSのリハビリテーション 原 貴敏
 15 視神経炎の鑑別診断と治療   毛塚剛司

第4章 視神経脊髄炎(NMO)の臨床
 1 NMOの病態   宮本勝一
 2 NMOの診断   岡本智子
 3 NMOの再発予防
  a ステロイドと免疫抑制薬   横手裕明
  b 抗C5抗体製剤   宮本勝一
  c 抗IL-6受容体抗体製剤   千原典夫
  d 抗CD19抗体製剤,その他の薬剤   木村公俊
 4 免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)   岡本智子

第5章 多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)の入院治療
 1 MS・NMO の入院治療   山村 隆
 2 難治性MS・NMO に対する血液浄化療法   林 幼偉
 3 合併症に対する治療   勝元敦子

附 録 多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)の公的支援と情報ソース
 1 MS・NMOの公的支援と情報ソース   青松貞光/齋藤貴志

 Topic 1 一次性進行型MS(PPMS)の病態と治療   天野永一朗
 Topic 2 レトロトランスポゾンと神経免疫疾患   大木伸司
 Topic 3 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)   三森雅広/岡本智子
 Topic 4 ME/CFSとlong COVID   山村 隆
 Topic 5 smoldering MS   蓑手美彩子
 Topic 6 WHOに選定されたMSの疾患修飾薬(DMD)は?   竹脇大貴
 Topic 7 血液浄化療法のレスポンダーとノンレスポンダー   木村公俊

 Clinical Note 1 NEDA   蓑手美彩子
 Clinical Note 2 CIS とRIS   田川朝子
 Clinical Note 3 tumefactive MS   千原典夫
 Clinical Note 4 MRIで異常の出ない再発   勝元敦子
 Clinical Note 5 MS治療は疾患修飾薬(DMD)だけではない   山村 隆
 Clinical Note 6 脳神経内科と精神科医療の接点   吉田寿美子
 Clinical Note 7 自己免疫疾患合併例の治療   髙橋和也

 Debate 1 ステロイド治療のベネフィットとリスクは正しく理解されているか?   山村 隆
 Debate 2 疾患修飾薬(DMD)の投与量は最適化されているか?   山村 隆
 Debate 3 EHET(early high efficacy therapy)は推奨されるか?   山村 隆
 Debate 4 オンライン診療は有用か?   雑賀玲子
 Debate 5 高齢MS 患者において疾患修飾薬(DMD)の減量・中止は可能か?   佐藤和貴郎
 Debate 6 MS・NMO とワクチン   千原典夫
 Debate 7 NMO に慢性進行型は存在しないのか?   天野永一朗

 Mini Lecture 1 小児期逆境体験(ACE)とMS   稲川雄太/岡本智子
 Mini Lecture 2 食生活と脳の健康―研究からわかったこと   堀内 碧
 Mini Lecture 3 腸内細菌叢研究とMS   竹脇大貴
 Mini Lecture 4 二次性進行型MS(SPMS)の病態研究の進歩   大木伸司

和文索引
欧文・数字索引

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序文

 2012 年5 月に刊行した『多発性硬化症(MS)診療のすべて』では,当時利用できた疾患修飾薬(DMD),多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)の病態の違いなどを紹介し,MS 診療が新たな時代に入ったことを強調した.その後,十数年間を経て,MS・NMO の病態研究や薬剤開発は加速度的な進歩を遂げたことから,今回,書名を『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療のすべて』へと変更し,全面的な改訂を行った.旧版の特長である「病態を踏まえた医療」,「あきらめない医療」の実践を骨格として,現在の診療実態に合わないものは除き,必要な項目や内容を追加した.国内外の文献評価に基づいて執筆された診療ガイドラインとは異なり,本書の基礎は国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院多発性硬化症センターにおける長年の診療経験にあり,各項目の重み付けや治療薬に対する評価はガイドラインとは異なる面がある.なお,研究に関連した項目の執筆は研究に従事している専門家にお願いしているが,臨床的に大切な項目は臨床経験の豊富な専門医が担当している.なお,本書では「NMO」と「NMOSD」など一部の語句や表現について,編集者は一定以上の統一を図らない方針とした.
 MS の治療戦略は,早期からいわゆる“high efficacy drugs” を用いる選択肢も含め,さらに多様になってきている.NMO では再発予防効果に優れた分子標的薬の開発が相次ぎ,多くの患者が再発を経験することなく生活できるようになってきている.MS の分子標的治療によって,世界中を飛び回っているビジネスマンや,30 年以上治療を継続しながら80 歳を過ぎても趣味を楽しんでいる女性の患者を診るにつけ,われわれの若い頃には予想もできなかったことが起こっていることを実感している.診療の初期に,もし別の治療を採用していたら,これらの患者の予後はどうなっていたであろうか? 二次性進行型MS(SPMS)になって苦労を重ねているケースのなかには,初期に何らかの理由で消極的な治療になってしまったか,病態に合わない薬剤を使い続けたことが尾を引いていると思われるケースがある.薬剤の選択肢も増えている現在,治療効果を予測できる薬剤を発症初期から積極的に使うことは決定的に重要であり,今回の改訂では早期治療の意義を強調している.
 将来的には,MS・NMO の診断も臨床症候のみに依拠する時代はおそらく終わりを告げ,脳画像,血液・リンパ球といったバイオマーカーや,さらには常在細菌叢の解析から得られるデータなどを参考にした精密な分類とそれに基づく「精密医療(precision medicine)」が実施されるようになるのではないかと考えている(Yamamura T: Lancet Neurol 2023).このような考えかたが浸透するにはまだ少し時間がかかると考えていたが,予想よりも早くprecision medicine の時代が到来するかもしれない.
 本書は,診療実践のための非常に有用な専門書であると自負しているが,同時に脳神経内科医がMS・
NMO の病態研究や治療の将来,precision medicine,バイオマーカー,グリア細胞の重要性などを学ぶ際の 参考書としてもご活用いただきたいと考えている.
 最後に,きわめて多忙な診療や研究の時間を割いて原稿をお寄せくださった先生方に,この場を借りて感謝を申し上げる.

2024 年11 月吉日
監修・編集者を代表して
山村 隆
国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部 特任部長